我が家の3匹の猫の暮らしの中に、近頃の人間サマが忘れてしまった「節度」を見ることがある。 それが一番顕著なのが、食事時である。 代々、捨て猫が拾われて我が家の一員になっていくのだが、新参猫はけっして先住猫より先に皿に顔を突っ込まない。 何かをちぎって与える時など、もちろん、気配を察して皆ブッ飛んで来るのではあるが、先住猫がもらうのを待って新参猫がおねだりをする。 三匹いても見事に順番は守られるのだ。
これは、自分の同居を認めてくれた先住者に対する、彼らなりの畏敬と感謝の念から来る振る舞いなのだろう。 元来猫のテリトリー意識というのは激烈なものだから、そう簡単に他者の侵入を許しはしないのだ。 それなのに、ウチに来た猫どもは何故か代々「容認」の態度を伝えていく。 そしてぶん。 彼は「容認」どころか、「保育」まで引き受けて、忙しく日々を過ごすようになった。 私もこんな猫は初めてである。
だが、遊びの時間となると、先輩も後輩もない。 小猫、中猫が大猫を追いまわし、かじりつき、蹴り上げる。 大猫は最初は余裕を見せて「何したっていいんだよ~」みたいな顔をしているが、そのうち、他の2匹の攻撃のあまりの激しさ・しつこさに、「いいかげんにして」と半ベソ顔で訴える。 それを見て、2匹は攻撃をやめるのである。
「兄ちゃんも歳だから、仕方ないなあ。 そんじゃ、アタシたちだけで遊ぼうか」
と相談し合って、2匹だけのジャレあいの世界に突入していく。
この程のよい状況判断と思いやりは、昨今の人間サマに見習ってもらいたい。
それが出来ないから、人間社会にさまざまな軋轢が生じているのではありませんか?