35 家庭内難民

 

   母ちゃんはこのところ夜は布団を抱いてあちこち家の中をさまよっている。 以前にも書いたことがあるが、真夜中の大運動会がまたもや激化したのである。 酷暑の季節は冷房のあるLDKのフローリングの上に布団を敷いて寝ていたが、なにしろこのエリアは家の中では一番広いので、我々の格好の運動場になる。 火付け役はいつもトメだ。 チビを誘い、オレに無理強いをし、疾走・ジャンプ・格闘など、あらゆる騒動をやらかして倦むことがない。 階下にこの物音が響いていたらどうしよう、と母ちゃんは思い煩って睡眠不足に陥った。
 

   先日、思い立ってLDKの床にあらん限りの布団・毛布・カーペットを敷き詰め、オレたちが騒いでも階下に響かぬように祈りながら、母ちゃんはソロリソロリと布団を抱いて玄関脇の小部屋に移動した。 この家でただ1つの個室である。 ここで思い切り眠りを貪ろうとしたのだが、そうは問屋が卸さない。  まず、その部屋のドアをチビが引っ掻いて「入れろ~」と騒ぎ、あんまりうるさいので母ちゃんが開けてやると、3匹ぞろぞろ小部屋に入ってきてここでまた小運動会を催す。  トメなんぞは母ちゃんの耳の穴に手を突っ込もうとする。 チビは腹の上で飛び跳ねる。 部屋の面積が小さい分だけ、母ちゃんへの当たりが頻繁になる。 オレだけだよ、比較的大人しいのは。 オレはやつらについて回ってるだけだからね。

  結局、母ちゃんがこの家の中のどこへ逃げようが同じことだ。 オレたちは母ちゃんがいるところで騒ぎたいんだから。 えへっ。 気の毒だなあ。 リフォームしたばかりだけど、母ちゃんは一戸建てへ移ることを考え始めている。 猫が騒いでも階下に気を遣うことのない生活が理想だ。 でもそんなカネはない。 空高く晴れ上がった秋の日の午後、母ちゃんの気持ちは海底1万mまで落ち込んだ。

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