58 人間って不自由だにゃ

 

   母ちゃんが旅に出る前夜、オレたちは母ちゃんの動作ですべてを察してしまう。 トイレを2個セットするし、ストッカーの中の猫食料の残量をしきりにチェックしたり、いつもよりさらに厳重に「こわれもの・危険物」の撤去に励んだりするからである。
 

   2泊以上の場合は、ご近所の「猫友」に鍵を預け、オレたちの世話をお願いする。 この場合は母ちゃんもオレたちも大安心。 微妙なのは1泊だけの場合である。 早朝、母ちゃんはオレたちの皿にドライフードをてんこ盛りにし、大きな深皿に水をいっぱいに張って、申し訳なさそうな顔をして出て行く。
 

   旅先はたいていの場合、温泉である。 露天風呂に浸かり、上げ膳・据え膳でおいしいものを頂き、同行者と夜遅くまで愚痴を言い合い、しゃべり疲れて眠る。 人間には、たまにこんなひとときが必要なんだと母ちゃんは言う。 日常の社会生活で自分を押さえ込み無理をし続けているから、一瞬でもそんなものと縁を切った空間で自分を解放したいのだそうな。
 

  母ちゃんはバカだ。 ふだんから小出しに自分らしさを出して、上手にストレス発散を心掛ければいいんだ。 ま、A型人間だし、融通が利かないから、ダメだろうなあ。  猫なんか、その点、気楽なものさ。 いったんテリトリー(縄張り)と、その中での順位が定まれば、あとは神様まかせで何とかやっていく。 「社会生活」と「個人生活」のギャップなんかない。 年がら年中一枚看板で押し通す猫に、温泉は不要だなあ。
   

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