健気なトメ
トメは、飼い主にとっては、けっして良い猫とは言えない。抱っこしようとすると私の手を引っ掻いて逃げる。気に入らないことがあると、布団・座布団にオシッコを垂れる。ただ、姉貴分の猫・チビに対しては従順である。
チビは、一昨年兄貴猫ぶんを亡くして以来、ずっと自分の体を舐め続けて禿げている。トメはそんな姉貴が心配で常に傍を離れず、何かと世話を焼こうとする。チビの残った毛の繕いをしてやったり、チビの好物の食べ物には口を付けず譲ってやったりしているのである。
それなのに、チビはトメの献身を評価しない。機嫌の悪い時にトメが寄ってくると「シャーッ」と威嚇し、「ウザイんだよ」という態度をあからさまにする。トメは「きゅう~ん」と悲しそうに泣き、離れた所でチンマリと座って姉貴を見ている。哀れでたまらない。
そうかと思うと、寒い時にはふかふかの猫ハウスの中に2匹が詰まってご満悦である。どうやら、チビがトメを毛布替わりにしようと呼び込むらしい。まったく勝手な猫だ。
「トメ、そんな性格の悪い奴は放っておけっ」と私は叫ぶのだが、トメの態度は変わらない。「いいんでやす。あっしのことは構わねえでおくんなせえ。あっしはただ、姐さんが元気でいてくれりゃあいいんでさ」トメが時代劇の任侠の徒ならそう言うのだろうなあ(トメは女だけど)。
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