100 命を紡ぐこと
ちび 母ちゃん、二日ばかり留守をしていたね。
ぶん ああ。新潟で鮭の遡上と産卵を見て来たんだって。
ちび あたしたちが缶詰で食べてる、あの鮭?
ぶん うん。鮭は川で生まれて、若魚の時に大洋に出て行くけど、必ず故郷の川に戻って産卵するんだそうだ。
ちび ふーん。何で生まれた川を覚えてるの?
ぶん その土地々々の川の水に溶け込んでる、木や土、苔の匂いなんかを覚えてるらしいよ。すごく頭いいんだ。
とめ ほんと? ねえ、それ、信じらんない。
ちび うふ。とめなんか、生まれた家が分かんなくなって、公園でギャーギャー泣いてるところを、母ちゃんに拾われたんだもんね。
とめ あたいは鮭以下って言いたいのか、姉貴~!?
ぶん ま、まあ。二人とも。
母ちゃん あのなあ。母ちゃんが感激したのは、鮭の頭の良さよりも、その潔さなんだよ。
とめ 「イサギヨサ」って何?
母ちゃん 鮭は川を遡るのに体力を消耗した上、産卵だろ。それで力尽きてすぐに死んでしまうのだよ。ボロボロになって死んでる鮭をたくさん見た。
ちび 死ぬために故郷に帰ってくるのかな。
ぶん いや、次の命と交替するためにさ。
とめ ふ~ん。じゃあ、帰ってきた川が汚れてると、鮭、かわいそうだね。
母ちゃん その通り! とめ、たまにはいいこと言うなあ。
とめ 「たまには」は余計だよっ。
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