30 トメは猫又

 

   トメは大きくならない。 生後1年2ヶ月は経っているだろうに、いつまでたってもお子様サイズの体で、顔つきも幼い。 行動も幼稚である。 「姉貴」のチビだって、このくらいの時期には、もう「オトナの女」の体格であったし、それなりの品格もあった。 もしかして、コイツは大人になりたくないのか。 それとも母ちゃんのブログの写真部門「ある日の猫一家」のために、大中小の猫3匹が揃っていた方が面白いってんで、貢献しているつもりなのか。  ???

   そればかりではない。 トメの尻尾は幾度かご紹介した通り、先に行くほど太い変な尻尾である。 口の悪い母ちゃんの知人は「アンタんとこの三番目はスカンクか狸だろ」と酷評するほどである。 実はこれ、尻尾の骨が先端で二つに分かれていることによる。 トメは話に聞くあの怪異「猫又」だったのか。

   さらに、コイツの後ろ足は、関節本来の向きとは逆方向に曲がるのである。 これも、変な格好で寝そべってる姿を写真でご紹介したことがある。 オレもチビも、こんなマネは絶対に出来ない。 猫族のお家芸、「香箱座り」(四肢の先端すべてを胴体の下に収納する座り方)をかたくなに守っている。  

   そして、決定的なのは、幼児期に台所の油壺に体ごとハマッて、使用済み油を舐め、七転八倒していたこと。 あの光景は思い出してもぞっとする。 発見が10分遅ければ、ヤツは昇天していただろう。 拾われて10日目の晩であった。 江戸時代の九州鍋島藩・化け猫騒動は、案外トメのような風変わり猫によるものかも知れない。

   こうしてトメの事を綴っていくと、どうしても、コイツただの猫じゃない、という思いが強くなっていくばかり。 「安部晴明」モノを愛読する母ちゃんは、面白がって、「すごいじゃん。アタシは猫又を飼っているんだよ~」とハイになっている。 いいよな。 仕事で家にいる時間が短いんだから。 猫又のお守りを24時間してるのはオレなんだぞう!