34 極楽、極楽

 

   「はあ~極楽、極楽」
 母ちゃんが髪を切って機嫌よく帰宅した。 最近はまったく旅行もせず、職場と家との往復だけであくせくしているものだから、美容院でだらり~んとリラックスしているのが、極上の幸せタイムなんだそうだ。   とはいえ、どこの美容院でもいいってわけじゃない。 意外なことに母ちゃんにも「行きつけの美容院」があるのだ。 20年間同じところに通っていて、ただの一度も他へ浮気をしたことはない。 途中、隣の区へ引越しをしたが、その後もクルマを10分転がして、もとの町の美容院を慕って行く。

   そこは腕のいい美容師夫妻がやっていて、この頃は娘さんも親の職業を継いで共に働いている。 職場では、たとえ夫婦・親子であっても、先輩・後輩・見習いの区別をわきまえた言葉遣いをし、きびきびと立ち働いて、まことに気持ちがよい。  そしてもう1つ。 このご一家は猫を飼っているのである。 オレとほぼ同年齢の、美しい白猫である。 名はラムちゃんといって女の子だ。 以前このブログのある記事で紹介したこともある。 ということで、母ちゃんにとっては「猫仲間」、ココロを許せる人たちなのだ。 

   椅子に座って洗髪してもらってる時から、もう「極楽」気分なのである。 あまりの気持ちよさに墜落睡眠したことさえある。 そして頭をこしらえてもらう最中も、誰はばかることなく「猫話」ができる。 こんな心地よい空間って他にあるだろうか。  これはひとえにご夫妻の、技術+αの人徳による。 我儘な客も多いだろうに(母ちゃんもその一人)、ちゃんと話題を合わしてくださる。 半端な人生修行では、こうはいかない。 母ちゃん、我が身を省みて、恥じ入ることも。

  オレたちは母ちゃんが二ヶ月に一度でもこんな気分を味わっていることを喜びたい。 ストレスためこんでオレたちに八つ当たりされても困るもんね。 

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