黒猫ぶんの子育て日記

   ２年に一度くらいの割合で、母ちゃんは部屋の模様替えをする。　情緒不安定のヒトだから、家具類も位置不安定である。　一昨年のある休日の午後、ビールを飲んでひっくり返っていた母ちゃん、いきなり腕まくりをして大物家具（書棚、キャビネットなど）を動かし始めたのをオレは覚えている。
　

   翌朝、母ちゃんの手足の何箇所かに紫色のアザがあった。　家具を運んでいる最中に、あちこちぶつけたらしい。　酔っ払って仕出かしたことだから、あまり記憶にないんだろうけど、それにしても危ないではないか。　本人の打撲は自業自得だが、一緒に住んでいるオレたちの身にもなってほしい。　家猫のテリトリーというのは、複数飼いの場合、それぞれのお気に入りの家具の位置まで含んだ勢力範囲なのである。　オレは書棚の上、ちびは食器棚の上、トメはパソコン机の上、という具合に「根城」が決まっていて、こんな狭いマンションの一室でも、群雄割拠、みだりに他猫の領土を侵してはならないのである。
　

   そんなことは酔っ払いにはわからないから、平気で家具を動かす。　オレたちの勢力地図の微妙なバランスが崩れる。　たとえば、オレがトメに邪魔されないで眠るための安全なスペースを改めて探さなければならない。
　

   猫は勝手気儘な生き物と言われるけれど、飼い主の勝手気儘に付き合わされることも多いんだと、オレは声を大にして言いたい。
  

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