63 想像力の欠如

 

   クルマで通勤する母ちゃんが、苦々しく思っていることがある。 
「なあ、ぶん。 こんなことでいいのかなあ」
最近のドライバーは、救急車になかなか道を譲らないのである。 救急車が「道を空けてくださいっ!」と絶叫する場面に遭遇することが多い。

   母ちゃんの場合、後ろからサイレンが聞こえてきた時点で、道路脇に寄り、速度を落とす。 または、渋滞中の追い越し車線にいる時は、反対車線に少し車体を出すこともある。 いずれにせよ、必死に走る救急車を優先して協力するのが「常識」以前の当然のことだと母ちゃんは思っている。
 

   確かにこの頃、救急車をタクシー代わりに利用する軽症者が増え、出動回数が頻繁になっていることも事実である。 利用者側の「常識」も問われているのだ。 だが、何割かは本当に生命の危険が迫っているケースであろう。 数分・数秒を争う事態がありうるのだ。 どうして、そのことに思いが及ばないのか。 搬送されている人の苦痛、救急隊員のあせり、そういったものが想像できないのだろうか。
 

   想像力の欠如が、殺伐とした社会を生み出している。 しかし、その反面、新型インフルの感染に過剰反応する姿がなんとも哀しい。 陽性の生徒が出た学校に電話をかけ、
「アンタの学校の生徒が乗る電車に、ウチの子も通学で乗っているんだ。 何故、休校にしないのか」と怒鳴る親がいるという。
 

   他人の苦しみは想像しないが、我が身の周辺への輪禍には過敏なニンゲンが増えているということか。 オレたち動物にニンゲンが勝っている点のいくつかが、また崩壊したってことだよね。  
  

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