2008年5月

 

   このところ、トメが凶暴化して困っている。 桜花も散り、目に染みるような新緑の季節となって、たまに家にいる半日くらい、ゆったりと過ごしたいのに、相手は私の情感を解し得ない。 とにかく、私を「動く標的」としか認識していないのである。 2・3m離れた所から、私の肩に飛び乗る。 首筋から胸元まで傷だらけである(もちろん、私の!)。
「オマエなあ」と思わず、恩着せがましい言葉が出る。
「母ちゃんが拾ってやんなきゃ、野たれ死にしてたんだぞ~」
だけど、こちら(ニンゲン側)の都合で避妊手術をしたり、狭いマンションの一室に閉じ込めたりで、後ろめたい気もしてるので、強く出ることはできない。 毎日引っ掻き傷をこしらえながら、飼い主も我慢をしている。
  

   トメの被害者は私だけではない。 食事時には3枚の皿に同じエサを等分に入れるのだが、トメは必ず、ぶんが食べている皿に首を突っ込み、ぶんを押しのけてしまう。 ヒトが食べているものの方がおいしそうに見えるのか、はたまたイジワルなのか。 押しのけられたぶんは、大人しくトメの皿に移動する。
「バカ、お人よしっ、ぶん、怒れっ!」と私の方がカッカしてくる。
   

   しかし、人間にもいろんなヤツがいるけど、猫の性格も千差万別だなあ。 「長男」ぶんは男の子だけど、面倒見がよく、誰にでも愛嬌を振りまき、ワルサはせず、飼い主の私の頭が下がるような猫である。 怖い顔の「長女」チビは、女ながら乱暴者で少々屈折した性格だが、私が拾ってやったことを忘れていないのか、飼い主には犬のように従順である。 そして、「末っ子」トメはこの世に怖いものなんかない最強の存在である。
  

   人間の兄弟姉妹だって、同じ親から生まれても、こんな風に違ってくるんだろうな。 オモシロイなあ。