ぶん大明神

 

   私はぶんのおかげで、どんなに毎日を快適に過ごしていることだろう。 まだ「勤労感謝の日」には早いが、ぶんに感謝状を贈りたい気持ちだ。
 まず、拾った猫たちを文句も言わずに育て、日々仲良く暮らしてくれていること。 こうはならない猫たちもいると聞くので、実に頭が下がる思いである。 
「あなたは猫同士仲良くさせるのが上手ですね」 と過分な褒め言葉をいただいたことがあるが、これは本当にぶんの性格・努力によるものであって、私の手柄ではない。
 

   次に毎日の送り迎えを欠かさず励行することである。 私は毎朝7時前に家を出て、夜7時以降に帰宅する。 ぶんは必ず他の2匹を引き連れて、居間と廊下を隔てるガラス扉のところで、「行ってらっしゃい」「お帰りなさい」を言う(ように見える)。 とりわけ、帰宅時は疲れ果てているので、ダンゴになって駆けて来る彼らの出迎えが嬉しい。 まず、ぶんからスーパーの袋に頭を突っ込み、「何かいいものは~?」の質問。 人間の子供と同じである。 この姿を見れば、鬼子母神のココロだってとろけるであろう。
 

   そして、たまの休日。 ノンベの母ちゃんが二日酔いでうなっていると、枕元にぶんの大きな顔がのぞく。 心配しているのか、呆れ返ってるのか、朝御飯の要求か、判然としないが、それでも無視するよりはマシである。 そして私の顔をペロペロ舐める。 
「ああ、この子のためにシッカリしなきゃ」
と思って、のそのそ起き出す。 他の猫ども、特にトメは、私がどうなっていようとあまり関心はないようで、遊んでくれる相手がいればいいわ、みたいな顔をして飛び回っている。 それはそれで、
「うぬっ、オマエなんかに馬鹿にされてたまるかっ」
と俄然負けん気を起こすもとになるのだから、世の中何が幸いするかわかったもんじゃない。
 

   猫たちのおかげで、かろうじて社会生活を送っている「母ちゃん」でありました。