暗い世相に灯をともした出来事があった。 一人の機長の判断と能力が多くの人命を救ったのである。 米国NY、ラガーディア空港を離陸した直後の航空機のエンジンに鳥が突っ込み、飛行不能の状態に陥った瞬間、機長はハドソン河に軟着陸することを考え、即実行した。
この事故は、運・不運共に、非常にまれな出来事であったと言える。 不運とは、航空機の両翼のエンジンに、同時に一羽づつ鳥が(しかもかなり大きな個体が)飛び込んだことである。 航空機は両エンジンのうちの一つが損傷しても操縦可能になってはいるという。 それが同時に両方飛び込まれるなんて、確率から言えば、何千万分の一の凶事であろう。
奇蹟は、その直後に起こった。 エンジンを失ってもなお、この機長は絶望せず、機体をグライダーの要領で動かして、無事ハドソン河水面に浮かせることを得た。 目撃者の証言によると、まるで当初の予定であったかのごとく、滑らかに水面に降り立ったという。
最後の最後まで希望を失わず全力を尽くす、と言葉では簡単に言えるが、実行は難しい。 ましてや、大勢の命を預かる身。 私は激情家ではないが、今回だけは新聞記事を読んで涙があふれて止まらなかった。 これが機となり、元気のない人間社会に活力が甦るといいのだが。 ぶん、人間もまだまだ捨てたもんじゃないね。 今日ばかりは胸を張って言えるよ。