星になったききちゃん

 

   ききちゃんはアメリカの草原で生まれた。 大家族で集団生活をするプレーリードッグの赤ん坊だった。 だけど人間に捕獲され、親兄弟と引き離されて、日本に渡ってきた。 それからいろんな人間の手を経て、私の友人Yさんに飼われることになったのだろう。
 

   7年前、Yさん宅を訪れて、ヤンチャ盛りであったききちゃんに会った。 ケージから出してもらうと喜んで、部屋中をくるくる飛び回ってイタズラをしていた姿を思い出す。   一人暮らしのYさんは、仕事で家を留守にする間、ききちゃんのことが心配で、ケージにウエブカメラを取り付け、職場からもチェックを入れていたそうである。 Yさんも仕事が忙しく、週に一度くらいしかききちゃんとゆっくり遊んでやれなかっただろう。 ききちゃんは一人でお留守番をして、毎日「母さん」の帰りを待っていたのだ。 

    8年間、Yさんの子供のように可愛がられたききちゃんはしっかりとその愛情に答え、この1月に世を去った。 その亡骸は、Yさんの家を見下ろす岡の上、一本の木の根元に葬られた。 松ぼっくりに似た実をつける木である。 Yさんはその実を大切に持ち帰って、ききちゃんのことを想っている。  故郷のアメリカの大草原に帰してやって散骨をしたいとも思ったが、ききちゃんにとっては異郷の地で自分をいとおしんでくれた「母さん」のそばにもいたい気持ちがあるだろう。

   ききちゃんは小さな星になって、故国の大草原と、大好きな日本の「母さん」の住まいを、毎夜見守っている。 人と人、人と動物、動物同士、この世での仮の姿は何でもよい。 心と心が通い合ったものたちの姿こそ温かく美しい。
      

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