ある朝、通勤のクルマの中から見た光景が忘れられない。 歩道をおぼつかない足取りで歩む高齢の男性が犬を抱いている。 犬は白い雑種の中型犬で、飼い主よりもさらに老い果てて見えた。 目を閉じて大人しく抱かれている。 老衰してもう歩けないらしい。
信号待ちで停車している数秒間、私の頭の中をさまざまな思いが駆け抜けた。 たぶん家の中でも寝たきりになっているあの犬を、抱いて散歩に連れ出すのは、あの老人にとっては相当気力・体力のいる仕事であろう。 そうではあるがたとえ一日のうちのわずかな時間でも、戸外の空気を吸わせてやりたい、できれば土の上でオシッコをさせてやりたい、と願って家を出るのではないか。 老人には他に人間の家族がいるのかも知れない。 だが、彼と犬の絆が一番強いのではないか。
どちらかが先にこの世を去った時の、残された者のことを考えつつ、アクセルを踏んだ。 老境にある人と犬とが、これから先の時間を、このようにぴたりと寄り添って生きていく。 老老介護は、人間同士だけではない。 私がもう少し若かったなら、同じ光景を目にしても、何も思わなかったに違いない。
それにしても我が家は、私とぶんがくたびれ中年、ちびが青春真っ盛り、トメはいまだに悪ガキのまま、どうなっていくのかな? ←ご覧になってからここをポチッと
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