オトナにならない猫実証

 

   もうすぐ生後2年になろうというのに、我が家のトメは子供っぽい姿のままである。 私がこれまでに飼ってきた猫の中に、こんなのはいなかった。 雌猫は生後10ヶ月も経つと妊娠可能、外見もおとなび、鬼も十八番茶も出ばな、どんなブサイクなヤツでもそれなりに「まあまあ、娘さんらしくなって」と言われるくらいには成長する。
 

   もちろん、都会の集合住宅暮らしで無責任に子孫を増やす訳にはいかないから、私は飼い猫にはすべて10ヶ月目に去勢・避妊手術を受けさせる。 それでもなお、元オトコ・元オンナの特徴は残っており、いつの間にやらオトナの男女の風貌に育っていくのが常である。 ぶんの性格は頼りないけど骨格は堂々たるものであり、ちびの性格は険しいけれど体つきはしなやかで美しい。 二匹とも八頭身の立派なオトナである。
 

   ところが、トメだけは、なんとしたことか。 アタマの全身に対する比率が大きくてドラえもん状態を脱していない。 また、顔の中で目が占める比率も大きい。 さらに体全体が小さく丸っこくてコロコロしている。 これらの特徴は、生物学的には「鍵刺激」と呼ぶのだそうな。 (key stimuli : 生存のため、他者から好意的な反応を得るための外形的特徴)  

   哺乳類は親離れするまでの期間が長いから、その間、周囲に守ってもらわねばならない。「コドモです、守って下さい」という信号を発し続けなければ、同属にさえやられてしまう。 それが「鍵刺激」で、人間の赤ん坊は言うに及ばず、トラの子でさえつい頭を撫でたくなるのは、みなこのありがたい「鍵刺激」のためである。 オトナや成獣はこれによってコドモを「守りたく」なるのである。
 

   だとすると、トメはこの歳でいまだに「あたいはコドモだから」と信号を発し続けていることになる。 何とずうずうしいヤツ!

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