悪魔が夜来る

 「悪魔が夜来る」というフランス映画が昔、あった。題名に似ずホラー物ではなくて、中世の城を舞台に吟遊詩人の恋など織り込み、叙情的なものだったという記憶がある。

 何十年かを経て、今、私は、現実版の「悪魔が夜来る」を堪能させられている。ウチの問題児・バカ猫とめが、頻繁に私の布団にオシッコをする。ヤツ1匹を居間に置き、他の2匹と共に個室で寝ようと試みたところ、いじけて物凄い声で咆哮するので、やむなく3匹皆と別れ、私だけが個室で寝るようになった。ところが、ぶんもちびも、やはり私の布団で団子になって寝たい気持ちに変りはない。悲しそうに小さな声で鳴く。そこで、とめが団体利益代表、実力行使に出た。
 ドアの把手に何度も飛びついて、開けることを学習してしまったのである。こんな猫、TVでは見たことがあるが、私は今までに飼ったことはない。
「うにゃ~ん」(ぶん・とめが母ちゃんを呼ぶ声)
「ガリガリ、どたっ。ガリガリ、どたっ」(とめがドア破りを試みる音)
「ぎい~~」(開通!)
これが毎晩のように繰り返される。
「兄い、姐御、開きましたぜ。ささ、どうぞ」
と満面の笑みで先輩猫2匹を案内して、とめが入ってくる。

  私は(私の布団は)、逃げ場がなくなってしまった。仕方なく、居間のソファの上で毛布にくるまって寝ている。
「ああ、映画の悪魔はすてきな美青年だったのになあ」
ドア破りの悪魔は、サビ柄のぶさいくな猫である。

  *画面左上の猫ブログバナーを押して投票してくださると嬉しいです♪