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31. ぶん大明神
私はぶんのおかげで、どんなに毎日を快適に過ごしていることだろう。 まだ「勤労感謝の日」には早いが、ぶんに感謝状を贈りたい気持ちだ。  まず、拾った猫たちを文句も言わずに育て、日々仲良く暮らしてくれていること。 こうはならない猫たちもいると聞くので、実に頭が下がる思いである。  「あなたは猫同士仲良くさせるのが上手ですね」 と過分な褒め言葉をいただいたことがあるが、これは本当にぶんの性格・努力によるものであって、私の手柄ではない。   次に毎日の送り迎えを欠かさず励行することである。 私は毎朝7時前に家を出て、夜7時以降に帰宅する。 ぶんは必ず他の2匹を引き連れて、居間と廊下を隔てるガラス扉のところで、「行ってらっしゃい」「お帰りなさい」を言う(ように見える)。 とりわけ、帰宅時は疲れ果てているので、ダンゴになって駆けて来る彼らの出迎えが嬉しい。 まず、ぶんからスーパーの袋に頭を突っ込み、「何かいいものは~?」の質問。 人間の子供と同じである。 この姿を見れば、鬼子母神のココロだってとろけるであろう。   そして、たまの休日。 ノンベの母ちゃんが二日酔いでうなっていると、枕元にぶんの大きな顔がのぞく。 心配しているのか、呆れ返ってるのか、朝御飯の要求か、判然としないが、それでも無視するよりはマシである。 そして私の顔をペロペロ舐める。  「ああ、この子のためにシッカリしなきゃ」 と思って、のそのそ起き出す。 他の猫ども、特にトメは、私がどうなっていようとあまり関心はないようで、遊んでくれる相手がいればいいわ、みたいな顔をして飛び回っている。 それはそれで、 「うぬっ、オマエなんかに馬鹿にされてたまるかっ」 と俄然負けん気を起こすもとになるのだから、世の中何が幸いするかわかったもんじゃない。   猫たちのおかげで、かろうじて社会生活を送っている「母ちゃん」でありました。

32. 「ある日の猫一家」その65   トメいじける
「どうせ、あたいはみそっかすだよ。 うっ」 「ぶさいくだし、性格悪いし。 ずっとここに一人でいればいいんだろ。 ええ~ん」 「おい、チビ。 トメがいじけてるぞ」 「ったく、手が焼けるねえ。 どれ、声をかけてやるか」 「はいはい、トメちゃ~ん。 可愛いねえ、いい子だねえ~。 おまえが一番」 「うえっ。 えっく。 ぐすん、ぐすん」 ←ご覧になってからここをポチッと ←押して下さると嬉しいです。 ←ありがとうございました

33. 82 信頼回復?
ガチャガチャ (玄関のドアの鍵を開ける音)・・・ ぶん   あ。また、母ちゃんが戻ってきた! ちび   いったん出て行ってから、何度戻ってくれば気が済むんだ。 ぶん   今日はこれで3度目だよ。 母ちゃん   ふう~っ。あ、やっぱりガスの元栓OKだった。 ドタバタ(また出て行く音) ちび   ご苦労なこった。何度も何度も。 ぶん   職場に遅れなきゃいいけどね。 とめ   何をのんきな事言ってるんでィ。そんだけ、我々が信用されてないってことなんだぞゥ。 ぶん   はあ~ん? とめ   冷蔵庫のドアにガムテープ、これは兄ちゃんが勝手に開けるから。袋物は隠す、これは姉ちゃんが入り込んで取っ手んとこで首がしまって死にそうになったことがあるから。ビン類も転がして割るから、これも仕舞う。電気のコードもじゃれついて発火したらいけないから、これも全部はずす。母ちゃんの気苦労は絶えることがないのだ! ちび   何を他人事みたいに言ってる。じゃあオマエは無関係だと言うのかい? とめ   ・・・・ ちび   兄貴、覚えてるよね。コイツ、拾われて1週間目の真夜中に、台所の油壺(廃油入れ)に入浴して死にそうになったこと。 ぶん   ああ、あれはひどかったなあ。母ちゃんの発見がもう10分遅れてたら、コイツは死んでたなあ。 ちび   とんだ「女殺し油地獄」だったねえ。 とめ   ・・・何なんだよ、それ。 ちび   そういう題の歌舞伎があるのさ。 ぶん   と、とにかく、みんなで母ちゃんの信頼回復に努めようではないか。 ちび ・ とめ   う、うん。 珍しく3匹の意見が一致を見た、ある朝の光景でした~ ↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑ ご覧になってからここをポチッと押して下さると嬉しいです。

34. 猫とは関係ない温泉話です
作家の椎名誠氏は八丈島が大好きだ。 とりわけ、末吉の灯台の直下にある温泉宿を気に入って何度も投宿したらしい。 数年前、そのこと を氏の「怪しい探検」シリーズを読んで知った時、私は嬉しくなった。 私もかつて一度、その宿に泊まったことがあり、強烈な印象が残っ ていたからだ。     その宿は、何の飾り気もない質素な建物で、いわゆるリゾートホテルとは程遠い存在であった。 食堂でドーンと出てくる夕食も、島で獲 れる海の幸をそのまま皿の上に盛り上げたものであったが、圧倒的にうまかった。 おまけに宿の外の波打ち際には、太平洋の荒波のしぶき をかぶる露天風呂があった。 夜ともなると、漆黒の闇の中、灯台のあかりが露天風呂を数十秒おきに照らし出す。 波濤の音と、灯台の光 。 この湯に一度でも浸かった都会の脆弱者は、それを好むと好まざるとに関わらず、魂をゆすぶられる思いをすることになる。     その宿に惚れこみ、またいつか訪れたいと心せきながら、20年近い歳月が過ぎた。 椎名氏のエッセイを再読して刺激を受け、インター ネットで探索すると、その宿はすでに廃屋となっていることが判明した。 私は深い喪失感と寂寥感を味わった。     何もかも便利で清潔で外見が美しい、というのが昨今の旅宿の条件なのであろうか。 その廃屋のかつての名は、南国温泉ホテルという。  ぶんが擦り寄ってきた。 「母ちゃん、何落ち込んでるの~」 「・・・うん、なんかね。 長い間会わずにいた懐かしいヒトの訃報を聞いたような、ね」 「?」     ←ご覧になってからここをポチッと ←押して下さると嬉しいです。 ←ありがとうございました

35. 15 新居
母ちゃんは週2回、マンションの部屋に戻る。 洗濯をするのと、ベランダの植物に水をやるのが表立った目的だけど、何、実は改装工事がどこまで進んでるのか見たいんだね。 工事をしているのは、すごく信頼できる工務店の人たちで何も問題はないんだけど、自分の部屋がどんな風に変わっていくのか、そこは母ちゃんも人の子で、興味深々なんだ。 今まで、床に段差のある複数の部屋、暗くて狭い上に使い勝手の悪いキッチンで13年間我慢してきた母ちゃんは、それら諸問題をこの際いっきに解決することにした。 仕事のため、自宅にいる時間はほとんどない状況だからこそ、せめている時くらいは自分の好きな空間で暮らしたい、と。    それに、意外なことだが、母ちゃんは料理好きである。 お客のある時は必ず何品か腕によりをかけてオリジナル・ディッシュを作る。 オレが思うに、これは母ちゃんのストレス解消なんだな。 たまに時間があると、普段できないことをやってみたくなるのは人情である。 だから、そういう時、母ちゃんは嬉々として台所を走り回るんだ。  「ああ、こんな楽しいことを、どうして専業主婦のヒトは嫌がるんだろう」 というのが母ちゃんの疑問である。 いや、専業主婦のヒトは、母ちゃんと逆で、毎日毎日家族のために献立を考えなくちゃならないから、料理がイヤになるんだ。  母ちゃんは今いるマンションの限られたスペース内で自分の理想に近いLDKを現出しようとした。 母ちゃんにはもはや係累がなく、これからも人間の家族はできそうにないから、どんな奇抜な間取りにしたって文句の言い手はないのである。 こんな経験はもちろん生まれて初めてであるから、さぞ興奮したことだろう。  いよいよ、リフォームが終了した部屋へ戻る日が来た。 また、例の若者たちが殊勝にも手伝ってくれるという。 オレは常々不思議に思うんだけど、こんな母ちゃんみたいなクセのあるオバハンの頼みを快諾する若者がよくいるもんだ。  ある土曜日の午後遅く、オレたちは母ちゃんの運転するクルマで帰宅した。 オレとしては当然「元の家に戻れる」って思うでしょ。 ところが。  ひどいよ、母ちゃん。 オレの臭いなんてどこにも残ってないじゃないか! LDKの床や壁からは真新しい建材の臭いがプンプン。 オレは胸が悪くなった。 オレは一晩中、泣きわめいて、母ちゃんに大目玉を食らった。 ちびは母ちゃんさえいればいいんだから、なんの動揺もない。 憎たらしいほど元気である。 オレはなんの因果でこう立て続けに環境の変化に脅かされねばならないのか。 あ~ん。   母ちゃんは嬉しくてたまらない。 とりわけ、広くて使いやすくなったキッチンが大のご自慢で、知り合いを呼んでは手料理でもてなす。 くたくたになるまで台所で働く。 お客さんたちは、皆いいヒトたちだから、舞い上がってる母ちゃんを好きなようにさせておく。 母ちゃん、ますます調子に乗ってお客を呼ぶ。 オレは「こんな家イヤだよう」と文句を言うヒマもなく、例によって接待に立ち働く。 悲しい習性で、母ちゃんにお客があると、オレの体はオートマティックに「余興係」として動き出すのだ。 お客さんたち、本当は、「可愛い子猫」の域を脱しないちびを見に来るのだけど、ヤツは例の人間嫌いがますます高じて、カーテンの後ろに隠れて絶対に出てこない。 そこでオレの出番となるわけだ。 ま、しかたないか。

36. 何がニャンでも世襲制?
ニンゲンは「金と権力」が大好きだ。 しかも、それを血を分けた我が子に伝えなきゃってんで大騒ぎ。 その子の出来は二の次なんだ。 人類の歴史上、数え切れないほどソレが失敗に終わってるのに(国家単位、個人単位でも)。 ニンゲンって、えらそーにしてるけど学習能力ないね。   創業時代の偉人の功績は、苦労を知らない二代目・三代目がダイナシにして潰してしまう。 それが企業なら、「よくある話」ですむけれど、今のニッポンの政界、ありゃ何なの? 閣僚のほとんどが世襲議員。 カネの苦労もしたことない坊ちゃん・嬢ちゃんに、庶民の暮らしがわかるとは到底思えない。    教育にカネがかかり過ぎるのも、原因のひとつだろう。 今はもう死語になってしまったが、一昔前には確かに「苦学生」というのがいた。 貧困に苦しみながらも勉学に励み、希望の職に就く者が少しはいたものだ。 それが今では絶滅寸前。 カネのある人・エライ人の子供は公立学校に行かず、幼少時からお受験をして私立で学ぶ。 そこには同じように恵まれた子供ばかりがいて、世間の嵐も知らずに成人する。 一方、公立にはさまざまな家庭の子がいて、日々問題を起こし、仲間同士、「あいつもアホやなあ。 でも両親が夜逃げして、ヤケになったんやろな」などと世間の諸相を見ながら育っていく。    政治家には「公立」組を混ぜていただきたいものである。 それには這い上がる力のある「苦学生」の再出現を待たねばならない。 アッ。 でも、ニンゲンって、そうなりゃなったで、昔のこと忘れて権力風吹かすからなあ。 太閤さんがいい例だあ。 水呑百姓の出だったけど、晩年は我が子可愛さに酷烈なコト平気でやって、天下万民を泣かせたね。  その点、猫はいいなあ。 子に伝えるのはねずみを捕るワザのみ。 生きていく上に必要な力をつけてやれば、もう他人として追っ払う。 (最近は室内飼いがほとんどで、そうしたいのやが出来まへん)

37. 11 引越し
母ちゃんがこのごろ頻りに家の中を片付けている。 戸棚の中の物を箱に詰めたり、不用品の処分をしたり。 どんどん家の中が広くなっていく。 そして「工務店のおじさん」というヒトたちが打ち合わせと称して何度もウチに出入りする。 母ちゃんはいつもの仏頂面を引っ込めて、何かとはしゃぐことが多くなった。    彼らの話では、なんと、母ちゃんはこのウチを改造するらしい。 しかも、単に床をフローリングにするとか壁紙張り変えるとかではなく、3部屋ブチ抜いて広いLDKにして床の段差もなくし、キッチンの仕様も全部変えるんだって。 なんで母ちゃんがこんなことにトチ狂ったのか判然としないけど、要するに環境を変えて気分一新したいんだなとオレは思ってる。 母ちゃんもここ数年このウチでいろんな辛い経験をしたので、その痕跡が残ったまま暮らすのでは遣り切れないのだろう。 かと言って、一戸建てを購入して移るほどカネはなし・・・悶々と悩んだ挙句の決心と見えた。     改築中は、小さな1部屋を残して、残りの空間全てに工事の手が入る。 その小部屋で親子3人?暮らすのはなんとも窮屈だ。 となるとよそに仮住まいをしなければならない。 さあ、困った。 オレたち猫属は自分のにおいが染み込んだ空間でないと息苦しくって暮らしていけないんだ。 だけど、大工さんたちのたてる騒音にも極力弱い。 母ちゃんはその点も呑み込んでるから、ずいぶん悩んだらしい。 結局、母ちゃんはよそに仮住まいをすることに決めた。 オレたちの体臭が染み込んだ布団など持参し、工事の音の聞こえない空間を求めて。 ここからかなり離れた町の、築40年の1DKのアパートだ。 猫同居OKのアパートはなかなかなくって、工務店のおじさんたちがずいぶん骨を折って探してくれたらしい。 母ちゃんは心から感謝していた。   その移住が4日後に迫っている。 2ヶ月間オレたちは知らない町の知らない家を仮の住まいとするわけだ。 母ちゃんの知り合いの人々が荷造り運搬その他を手伝ってくれるらしい。 オレもちびもこのマンションで人生(猫生)始めたに等しいのだから。 今回の引越しは実にスリリングな体験になるだろう。

38. 長男・長女性格
夏も長けてくると、よせばいいのに、我が家の狭いベランダに舞い込んでくるトロい蝉がいる。3匹の猫どもが固唾を呑んで待ち受けているのだから、たまらない。いくら母ちゃん(私)がガードを強化したって、洗濯物を干す時などはスキだらけだ。今朝もガラス戸をあけた瞬間に、とめがダッシュ、蝉をくわえて意気揚々。すかさず私が奪い取って放したものだから、ヤツは激怒し、狼のように咆哮したあげく、カーテンの束ね紐を食いちぎり、私のタオルケットにおしっこを垂れた。   彼等の狩猟本能を満足させてやれないことについては、常に後ろめたさがつきまとう。私だってノラや半ノラの蝉なら奪わない。生き抜くための糧でもある。しかし、日々の食が足りている飼い猫どものオモチャにはさせられない。何年間も土の中にいて、やっと地上に出てきた蝉たちが、たった1週間の命を謳歌しているのだから。   面白いのは、とめのワルサに対するぶんとちびの行動だ。私がとめの顔をタオルケットに押し付けて叱るのを見た後で、とめを追い廻し、「しゃーっ」と威嚇して猫パンチ。「オマエが悪いんだよ、オマエが」「母ちゃんに迷惑ばっか掛けてさ」と言わんばかりだ。これは、長男・長女をもって自ら任じている彼等2匹が、「母ちゃん、俺たちからも叱っておいたからね。もうさせないから安心して」と私に助太刀しているようで、妙に可笑しい。   人間の子の場合も同じだが、叱るにはエネルギーが必要だ。昨今は叱る気力も無いオトナが多い。この厄介な仕事の一端を引き受けてくれる2匹に感謝、感謝の母ちゃんである。 画面左上の猫ブログバナーを押して投票してくださると嬉しいです♪

39. ぶんの子供返り
年下の猫達の養育係であり、かつ彼女らに規範を示すべく行動していたぶんの様子が最近変わった。 飼い主にとっては最大の迷惑・「真夜中の運動会」の音頭はバカ子猫・トメがとっていたのであるが、ここ数週間、ぶんが率先して暴れているのである。   また、早朝6時40分、私が出勤しようとすると、家具の上に乗ったぶんが、ニャーニャー鳴きながら私の頬に猫パンチを食らわす。 まるで、「母ちゃん、行くな」と言われてるようで妙にせつない。 家具の上を飛び移りながら私の後を追い、しきりに何かを訴えているようなのである。   人間の場合であると、幼児期の子供が、新たに生まれた弟・妹に母親の愛情を独占され、わざと母親の気を引くような粗暴な振る舞いをすることが知られている。 これを「子供返り・退行現象」などと言うのだそうな。 「あんた、お兄ちゃんでしょ。いい子にしてなきゃダメよ」となだめても聞くものではない。 人間も猫も同じようなもので、ぶんは、きっと後輩の猫2匹の相手に疲れ果て、飼い主の私に「オレだって面倒見るより、見てもらう方がいいんだよう」と自己主張を始めたに相違ない。 今、パソコンに向かっている私の膝の上で、ごろごろ喉を鳴らしている。   思えば、今まで、ぶんの性格のよさに頼り切り、私自身いろいろなことをさぼってきた。 「まっくろ黒すけ」のはずのぶんの首の下に、白い毛が数本生えているのを発見。 ストレス性の白髪かなあ。 ←ご覧になってからここをポチッと ←押して下さると嬉しいです。 ←ありがとうございました

40. 22 母ちゃん仰天!
今回の記事は、突如オレの身に降りかかった厄災なので、母ちゃんが自分が書くって言っています。(今から半年くらい前のことです)  暮れも押し迫った12月のある夜。 ウチに帰って、出迎えたぶんを抱き上げて、私は腰を抜かしそうになった。 ぶんの肛門の下に、もうひとつ爆裂口が開いているのだ! 真っ赤にただれて、中の内臓が見えそうになっている! 私はどうしようもないほど動顚して、掛かり付けの獣医に電話した。 留守電に「ウチの猫が大変なんです、診てもらえますか」と。 夜8時だ、診てくれるわけがないと絶望しながら、それでも藁をもつかむ思いであった。 同じマンションの猫仲間の奥さんにも電話をして、食事中のところなのに、すぐに来てもらった(彼女は現役の優秀な看護師さんである)。 獣医からは奥さんの到着と同時に折り返し電話があった。  「どうしたんですか」「肛門の下に大穴が開いて、中身がみえてるんですう」「あ~、それはニオイブクロが破れたんですよ」「ニオイブクロ?」「猫にはよくあることです、心配ありませんよ。 一応元気なんでしょ」「は、はあ」「今、外からなんで。明日の朝連れていらっしゃい」 ということになった。 駆けつけてきてくれた奥さんも、とりあえず、ぶんが普段どおり歩いているので、ひとまず安心して帰っていった。 いっときのパニックが収まり、やや冷静になってぶんを見ると、なるほど、テーブルの上には飛び乗れるし、顔つきも尋常である。 わからないというのは怖いもので、私の意識はぶんの傷口にだけ集中して、ぶんが比較的元気であったことには及ばなかったのである。  そういえば、ここ何日か、ぶんは体をさわられると「にゃ~!」と痛そうな声を上げ、どうも様子がおかしかった。 今考えると、ニオイブクロ(=臭腺)にバイキンが入り、あちこちのリンパ腺も腫れ上がって痛かったのだろう。 今晩は、それが破裂し、膿が外に出て、多少楽になったと思われる。 人間も同じで、オデキが膿を持って腫れ、それが破れるまでが辛いというが、猫もそうだったのである。  しかし、腫れ物が破れた直後に遭遇した私としては、驚かざるを得なかった。 肛門の隣に大穴が開いていて血膿だらけなのである。 思わず、他の2匹を疑った。 「アンタたち、ぶんを噛んだね!」 2匹はキョトンとしていた。 思えば毎日が戦場である。 チビとトメは、ぶんがおとなしいのをいいことに、好き勝手をやっていたのだ。 はたく、噛み付く、蹴り上げる、追い回す。 そして都合のいい時だけ、ぶんの腹を枕にして眠りこけていた。 ぶんは何をされても、されるがままだ。 絶対にやり返したりしない。 ただ、痛そうに「にゃー」と泣いていた。 私はそれを見て、薄情にも 「やあい、ぶんの意気地なし」 と嗤っていたのだ。 これほど後悔が身に染みたことはない。 「ぶん、ごめん」 私は心から謝った。 きっと2匹にどこかを噛まれてバイキンが臭腺に入り、化膿させたのであろう。  「母ちゃんが悪かった」 いつも、動物写真家気取りで、ぶんが2匹にやられている時の困り顔などを撮り、「ダメおやじ~」と名付けて、知り合いに見せ回っていたのである。 ウチは気のいいとうちゃんと3人の性悪オンナの家族なのであった。

41. 32 猫とクルマは洗わない
母ちゃんのモットーは「猫とクルマは洗わない」である。  部屋の掃除や片付けはマメにやるほうだ。 風呂も大好きで毎日機嫌よく入る。 ところが、クルマは毎日使っているというのに、何年も野ざらしのままなんである。 洗剤やワックスで愛車をぴかぴかに磨きたてている人は、母ちゃんの実態を知って唖然・呆然。  「えっ・・・買ってから一度も洗車してない?」 「クルマなんて走りゃいいんだよ」 威張る場面でもないのに大見得を切る。 クルマの上に鳥の糞が落ちていたって平気だ。 雨が洗い落としてくれるのを待っているのである。 母ちゃんは、コレで何人か友達をなくしているだろう、とオレは猫の身ながら心配になる。   一方、オレたちがありがたいと思うのは、母ちゃんに猫を入浴させる考えのないことだ。 オレたちは、日々、自分の体を舐めて毛づくろいをしている。 これは、毛間の脂肪分・塩分を体表に過不足なく配分するための「本能的行為」なんだ。 シャレや酔狂でやってんじゃないんだよ。 ニンゲンさまはオレたちが臭いと思い込み、手前勝手に風呂に入れようとするが、冗談じゃない、やめてほしい。 かえって猫の体に悪いんだ。   この点、母ちゃんはきわめてオレたちに近い「 野生のカン」を持っている。 「うん? ありゃ何かワケがあって毛づくろいしてるんだな。風呂も要らないね」 と、なるのである。 我が家を訪れるお客さんたちは、 「まあ、キレイな毛並み。 猫ちゃん、毎日お風呂に入れてるんですか」 とお尋ねになる。 見れば歴然の汚いクルマとは違って、オレたち猫は身だしなみを忘れないからつやつやとキレイである。 母ちゃんはオレたちを風呂に入れないことをバラす。 「えっ・・・拾ってから一度も風呂に入れてない?」 「猫なんて元気で走り回ってりゃいいんだよ」   期せずして、クルマの時と同じ答えを吐き出す母ちゃんでありました。

42. 62 猫と人間の顔洗い
オレが無心に顔を洗っているのを見ながら、母ちゃんが言った。「耳を越せ、耳を越せ」  猫の顔洗いが、前面だけでなく、後頭部にまで及ぶと、明日は晴れ!なんだそうな。 これは母ちゃんが子供の頃、亡き両親がよく言っていたフレーズだという。   何故なんだろう。 晴天→乾燥→顔や頭の毛に湿り気を与えたい、となって、猫が前足を舐めては一生懸命に頭をゴシゴシやる、と勝手に人間が考えたのか? 一説では、口の周りやヒゲに付いた食べ物の残滓を徹底的に排除するためとも言われている。 臭いが残っていては、狩の獲物たちに気付かれてしまうからだ。 どちらにしても、オレたち猫が潔癖症であることに変わりはないだろう。 このメイクアップには一日のうち数十分を費やしている。   我らが母ちゃんなんぞ、この点、猫にも劣る。 毎朝、ぶるぶるっと簡単に顔を洗って口紅を薄くつけるだけである。 この間約1分。 同じニンゲンで同じオンナでも、この作業に1時間以上かける人がいると聞く。 しかも、年々老いていく肌を甦らせるために、エイジング・ケアなる施術を行っているという。 いったいどんな魔法なのかね。 「はあ~ん? 何やったって無駄だよ。 生き物はみな老いさらばえて死んでいくのみ。 これだけが神様の与えてくれた平等さ」  悟っているのか、単に不精なだけなのか、はたまたヤケになっているのか、判然としない。 人間の同性の皆様、母ちゃんの暴言をお許し下さいね。 ←ご覧になってからここをポチッと ←押して下さると嬉しいです。 ←ありがとうございました

43. 21 布団蒸し
我が家では、毎日、母ちゃんが仕事から帰ってくると、我々3匹の猫がリビングのガラス戸を隔てて「お帰りなさい」と出迎えるのがしきたりである。 そして、母ちゃんが持ち帰ったスーパーの買い物袋をガサゴソと物色するのである。 母ちゃんが子供の頃も、同じことを自分の母親に対してやっていたらしい。 「何かいいもの、ないかなあ」の子供心は動物でも人間でも似たようなものだ。 母ちゃんは我々の出迎えをことさら喜ぶから、親孝行なオレは他の2匹を引き連れて、この習慣を励行している。   そんなある日。 つい先日、おトメが油を舐めて化け猫騒動をやらかしたばかりというのに、今度はチビがとんでもないことをやってくれた。  ある夜、母ちゃんが帰宅してガラス戸の向こうを見るとオレとおトメだけだ。 真っ先にぶっ飛んでくるチビの姿がないので、母ちゃんは心配になった。 リビングから和室に入った母ちゃんはオロオロしてチビを探す。 と、その時、うがうがという苦しそうなうめき声が、畳んだまま置いてある布団の中から聞こえてきた。(われらが母ちゃんは無精者で、起床後、布団を畳みはするが、押入れに入れない) よく見ると、布団の内側がもぞもぞと動いている。 チビだ!    なんと、チビは掛け布団カバーにあった8cmくらいの裂け目から頭を突っ込んで内部に侵入し、布団本体の反対側に回っていって、そこから出られなくなっていたのである。 脱出不可能となってから、どのくらいの時が経っていたのか。 誰にもわからない。 母ちゃんはため息をつきながら、チビを救出したのであるが、ヤツは感謝するどころか、自分の愚行が恥ずかしくて気持ちの持って行き場がないのか、思い切り母ちゃんの二の腕に噛み付いた。 その後もオレやおトメにさんざん猫パンチ・猫キックを喰らわした挙句、ふてくされて寝てしまった。    母ちゃんの説によれば、我々猫族は人間同様「恥ずかしい、照れくさい、マがもたない」という高度な感情を有しているんだそうだ。 そうかな? そうかも。 だから、皆さん、オレたちのこと見直して、もっと優しく接してね。 ま、それはともかく、チビの気性はとてつもなく猛々しい。 怒った時の顔なんかリビア山猫にそっくりだ。 人間も獣も誰だって近づけない。 野生で生きていれば猫界の女ボスであろう。 人間で言えば、若いながらも組長夫人(=姐さん)の貫禄である。 そのヤマネコが、都合の好い時には「母ちゃん、抱っこ」と甘えて母ちゃんの両腕の中でゴロゴロ喉を鳴らすのだから、コイツの頭の中はどうなってるんだろうと不思議でたまらない。    たぶん、ボロボロの状態で母ちゃんに拾われた時のことを、折にふれて思い出すのか。 それに比べて、おトメは(捨てられてすぐ母ちゃんに拾われたので)無邪気、天真爛漫である。 まあ、悪く言えば、恩知らずの我儘ムスメである。 チビは横目でおトメを見ながら、「ケッ、この苦労知らずが」と心中複雑な思いでいるのに違いない。

44. 猫と雷様
「地震、雷、火事、オヤジ」の中のオヤジはとっくの昔に権威失墜してしまったけれど、残る三者は依然として我々を脅かしている。 地震・火事のもたらす惨状は言うまでもないが、雷サマの害はあまり表面に出てこない。 めったにないが、いったん暴れるとコワイ。 犬はとりわけ雷を怖がるし、池波正太郎先生の時代小説では、れっきとしたサムライでさえも、雷のせいで惨めな姿をさらしてしまう場面がよく出てくる。 実は私は、夜空を引き裂く稲妻を美しいと見惚れていたりする, 相当可愛げのないオンナである(もちろん、人命や家屋に被害が及んだ場合は別)。 我が家の同類のオンナども(雌猫達)も、今までは雷鳴の轟きに動揺するようなことはなかったので、こんなものかとタカをくくっててきた。 しかし、10日前の夜。 激しい雨が降ってはいたが、私の足もとでは、3匹の猫達が平和に晩御飯を食べていた。 その時、「バッキーン!」という、すぐ近くに雷が落ちたような音がした。 瞬間、3匹は、全く違う3方向へ逃げ散った。 0,5秒の出来事である。 まるで三菱のマークのように逃げる方角が分かれていたのが、可笑しくてしようがなかった。 臆病な犬とは違って、猫はずうずうしい生き物と思い込んでいたが、食事時などに不意を襲われると、このように醜態をさらすこともあるんだなあ。 そして、3匹はそれぞれ棚の上などで顔洗いを始め、動揺を隠そうと懸命になっていた。(猫がこういう時毛づくろいをするのは周知の事実だ)  私がのぞきこむと、「ちっ。こっち見るんじゃねーよ」という表情で睨み返されたものである。   ←ご覧になってからここをポチッと ←押して下さると嬉しいです。 ←ありがとうございました

45. 80 オシッコ疑惑
母ちゃん   なんじゃ、こりゃ!くっさ~い!!  ぶん   母ちゃん、どうしたの。 般若みたいな顔してさあ。 母ちゃん   誰だ~。こたつ布団にオシッコたれた奴は! ぶん   ・・・・ ちび   ・・・・ とめ   ・・・・ 母ちゃん   ほんとにモウ~っ。ただでさえ忙しいのに、これ以上仕事増やすんじゃないよっ! ぶつぶつぶつ(→ベランダへ布団干し作業) ぶん   おい。誰だよ、オシッコしたの。 ちび   あたしじゃないよっ。 とめ   兄ちゃん。あんた、さも犯人は自分以外って言い方じゃねーか。 ぶん   オレはれっきとしたオトナだぞぅ。 とめ   都合のいい時だけオトナになんなよ。 ぶん   にゃんだとぅ、こんのクソガキがぁ! ちび   兄貴、今日はあんたの方がとめよりガラが悪いよ。 とめ   あたいは物事には公正な処断を、と主張してるだけだよ。 母ちゃん   ホントにみんな自分は犯人じゃないって言うんだな? 3匹   ハイ。 母ちゃん   じゃあ、いいよ、もう。あっち行ってな。 3匹   あれっ? 母ちゃん  (犯罪心理学によると、犯人は必ず犯行現場に戻ってくるっていうよな。このケースでは、ヤツらのうちの誰かが、自分のオシッコの臭いを確認しに、近いうちに布団に近寄ってくる、と) とめ   兄ちゃん、姉ちゃんがさっきから何かそわそわしてんじゃね? ぶん   しーっ。あ、干してある布団の臭い嗅ぎに行った! とめ   あーあ。身の破滅だなあ。へへっ。 ベランダで: 「このバカ猫が~!」 「ご、ごめんなさいっ」 ↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑ ...

46. 87 ケータイ論争
ぶん   あ~あ、ダメだ、こりゃ。 ちび   どうしたの? ぶん  母ちゃんが新しいケータイをいじってるんだ。 ちび   えっ!母ちゃんケータイ持っていたっけ? ぶん   一応持ってたけど、面倒くさくて、全然使っていなかったんだよ。 とめ   へ~え。基本料金払ってたんだろ? バッカじゃねーの。 ぶん   会社から旧型の使用期限通知が来て、新しい機種になったんだけど、やっぱり使うのイヤみたいなんだ 。 ちび   だって母ちゃんは、一応パソコンは使うじゃないか(分野によるけど)。 ぶん   パソコンは画面もキーボードも大きいだろ。母ちゃんはあのキーボードを「この野郎っ」って叩きつけるのが好きなんだなあ。 とめ   それが何でケータイになるとダメなんでぃ? ぶん   小さい画面でコシャコシャ操作するのが嫌いなんだろ。 とめ   ケッ。要するに不器用ってことじゃねーか。 ちび   ま、まあ。そういうことになるかも知れないけど。 ぶん   母ちゃんがケータイ嫌いな訳は、他にもいろいろあるんだよ。 ちび   ああ、以前に聞いたね。ネット犯罪の温床になるとか、恋人との別れ話でさえメールで済ませるヤツがいるとか、人との会話中にケータイ見るのは無礼だとか、メールの返事が即来ないとイラつく依存症人間が増えるとか、とにかくもう、悪い面ばかりあげつらっていたね。 ぶん   ところがねえ、街中の公衆電話が激減して、緊急時にはお手上げなんだ。そこで、さしもの頑固者も・・・ とめ   敗北したってワケだ。うきゃきゃきゃ、ざまーみろぃ。 ぶん   これ、とめ。言葉を慎みなさい。 とめ   あたいに人間の手指があったら使いこなしてやるんだけどな。 母ちゃん   黙って聞いてりゃいい気になりおって。とめオマエだけ晩飯抜きっ! とめ   母ちゃん、ごめんよぉ。もう二度とバカとか不器用とか言わないから勘弁してくれ~。 ぶん ・ ちび   ・・・・(アイツ、火に油を注いでる)    ↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑ ご覧になってからここをポチッと押して下さると嬉しいです。

47. 「ある日の猫一家」その201   母ちゃんウザイ
 このヒトが誰かすぐに分かったら、母ちゃん以上の世代だにゃ  (4月12日、某神社にて母ちゃん撮影)  このヒトは、あたいみたいな子が大嫌いにゃ  (4月初旬ガラス窓の内側で伸びきってる所を外から撮られた)  母ちゃんは家に居るようになってから、あたいたちの観察に余念がない。  ぶん兄貴が実は「いい子」ではなく、ゴハンをいっぱい床にこぼしてる事や・・・  食い過ぎた兄貴とあたいが、猫草のお世話になってることとか、いろいろ見てるので、ちょーウザイ! ↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑ ご覧になってからここをポチッと押して下さると嬉しいです。

48. 「ある日の猫一家」その68   トメの飲酒?
「あ。 母ちゃんの飲みかけの焼酎だ」 「うん? どんな味?」 「あのくそガキ! 未成年じゃないか」 本心(アタシでさえ味わったことないのに。 くやしいっ!) 「急性アルコール中毒が心配」 本心(なんであんな格好で飲めるんだあ。 オレにはとうてい出来ないよ。 くやしいな)     ←ご覧になってからここをポチッと ←押して下さると嬉しいです。 ←ありがとうございました

49. 72 平成猫の手シンポジウム
ぶん    人間社会には、けしからんことに、猫のワルクチが沢山ある。 今日はそれらを収集分析してみたいと思うんだけど。 ちび    はい。 まず、 猫の手も借りたい という言葉。 ひどいよ。 まるで我々に何の能力もないような言い方じゃない? とめ    まあ、ね。 ちび姉貴は運動神経抜群のハンターだもんな。 でもぶん兄貴なんか見てると、言われても仕方ないような気もするねえ。 一日中、仰向けにひっくり返って寝てるんだから。 ぶん    う・・・ あれはねえ、本当は、毎日忙しがってあくせくしてる人間が我々を見てやっかんで言った言葉なんだぞ。 ちび    そうなんだぁ。 ぶん兄貴は何でもよく知ってるね。 とめ    怪しいなあ。 じゃ、 猫の額 ってのは? ぶん    一般的には土地の狭さを言う時に使うんだ。 「猫の額ほどの庭」なんてね。 とめの額なんかないに等しいや。 脳の容量からして小さいからね。 とめ    ふんっ。 兄貴の額はハゲ上がってるぶんだけ広いね。 ちび    ブッ。 とめ、それを言うなって。 気にしてるんだから。 とめ     猫ババ ってのは何? ぶん    ウンコのことをババとも言う。 我々はウンコした後、砂をかけて埋めて知らん顔するだろ。 それと同じように、人間が何かいいもの拾って、どこかに隠して知らん顔してることさ。 ちび    えーっ。 それってちょっと無理があるんじゃない? 第一、ウンコはいいものじゃないよ。 とめ    そうだそうだ、兄貴のウンコなんざ、とりわけ臭いし。 人間だってオヤジが朝ウンコした後のトイレは誰も入らないって。 ぶん    黙って聞いてりゃいい気になりおって! こら、とめ、オマエなんか勘当だぁ。 とめ    残念でした、あたいを勘当できるのは母ちゃんだけさ~。 母ちゃん  うるさいっ。 何をぎゃあぎゃあ騒いでるんだ。 眠れないじゃないか。 オマエらみんな勘当だぁ! ↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑ ご覧になってからここをポチッと押して下さると嬉しいです。

50. 「ある日の猫一家」その158   ちびの人見知り
とめ 「わ~い、お客さんだ!超うれしいなっ。 まず、カバンをチェーック」 同じくとめ 「お客さん、かまって、かまって~」 (興奮して立ち上がってます) ちび 「ぶるぶる・・・あたしはここから絶対出ないぞ」 (物陰にかくれたまま) 翌日のこと ぶん 「ちび、オマエお客様に挨拶くらいしろよ」 とめ 「そうだよ姉貴、失礼じゃないか」 ちび 「・・・・・」    ↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑ ご覧になってからここをポチッと押して下さると嬉しいです。

51. 19 化け猫騒動
そんなある日のこと、深夜11時ごろ、母ちゃんがコンビニに飲み物を買いに出た。 これは、母ちゃんが帰ってくるまでの約20分の間に起こった怪事件である。 以下は衝撃を受けた母ちゃんに語り手を譲る。   私がコンビニから帰ってきて、ふと見ると、おトメの様子がおかしい。 買い物に出て行くまで、例によってチビにふざけかかって大はしゃぎをしていたはずだが・・・どうも元気がない。 それに何やら全身が濡れそぼっている。 特に腹側と四肢、喉元が、である。 頻りに濡れている箇所を舐め、口の中もくちゃくちゃと舐め回している。 一瞬だが、あってはならない光景が浮かんできた。 私がいなかったわずか20分の間に先住猫2匹が、日頃の鬱憤を晴らしたのではないか。 「この煩わしいバカ子猫め」ってんで。 特にチビは今のところ育児に専従しているように見えて、実はやはり憤懣やるかたない胸中だったのではないか。 コイツがいなければ、アタシは平穏な日々が送れたのに、「アンタのせいで・・・」ウッキーとなって子猫に何かしたのでは。       まあ、外傷はなかったから、その疑いはすぐに晴れたが、気になるのは子猫の具合である。 猫じゃらしを見せてもまったく反応はないし、とにかくグッタリしている。  「ああ、拾ってから たった10日の縁だったか」 とまで、一時は思ったほどだ。 そうこうしている間に、おトメは大量の嘔吐をした。 体と同じくらいの量を瞬時に吐いた。 それが妙に油くさい。 アッと気がついた。 私がいない間に、おトメは調理台の上に置いてあった廃油壷(深さ4cm、直径10cmの皿)の中の油を舐めたのだ! 濡れている部分から推測して、体ごと深皿の中に浸かってペロペロと! ああ、なんというバカ猫。      そういえば、真夜中に油を舐める化け猫の怪談がなかったか。 江戸時代の九州鍋島騒動は誰かの恨みを背負った猫が化けて暴れる話だったような・・・本当に真夜中、猫は油を舐めるのだ。 それを実証したウチのバカ猫は、しかし、消化不良に苦しんであわや死ぬところであった。 (吐かなかったら、死んでいただろう)  私は呆然と台所に立ち尽くした。 今まで飼った猫の中で、ここまでオロカだったのはいない。 てんぷらなどを揚げた後の使用済み油は、長年そんなふうに調理台のすみっこに置かれてきたが、手を出した猫はいなかった。 そんなモノを台所に放置してきた私もいけないが、あのニオイを嗅いだら、普通はたじろぐのではなかろうか・・・未知の体験に戦慄する私であった。      なるほど、これでは人間の赤ん坊も油断がならないわけである。 ハイハイを始めると、行き着く先のものを何でも口に入れてしまうというが、このことなんだな。 さぞかし、人間の母親も苦労が多いことだろう。 四六時中、目が離せず、油断がならないのであるから。   ここに至って、母ちゃんは初めて、子育てをする人間の同性に同情の念を抱いた。 赤ん坊を産んだことのない母ちゃんにとっては、知識としては知っていても、今回の事件でやっと身に染みた現実だったのである。

52. 「ある日の猫一家」その156   とめの暇つぶし
あ~退屈ぅ。 朝から顔洗いばっかり何十回やったか覚えてないんだけど。 うん? 母ちゃんの机の引き出しが空いてる・・・ なんか引っ張り出して遊ぶモノないかな? ちび 「あのバカ。 母ちゃんの書類で遊ぶと殴られるゾ。  あたしはお利口さんだから、こういう差し障りのないモノで遊ぶんだい」    ↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑ ご覧になってからここをポチッと押して下さると嬉しいです。

53. 13 母ちゃんのバカ~
__この引越し話は今をさかのぼる1年前の騒動です__  今回は母ちゃんが是非にも、と言うので記述者の役割を譲ることにしました。 これから先は母ちゃんの言葉です。  ・・・・毎日仕事をしながらの引越しがこんなにキツイもんだとは思わなかった。 土日も容赦なく仕事が入るし、一人暮らしで手は足りないし。 それにもう若くもないしなあ。 まあ、マンションの一部屋にすべての家具を押し込んで仮住まいに移り、残りのスペースをリフォームという計画なんで、知り合いの若者たちに力仕事を頼み、必要最小限の生活道具を持って、隣の区のアパートに引っ越した。 ところがねえ・・・ 猫たちが不安定でどうしようもない。 だいたい、猫なんてものは昔から「飼い主よりも家につく」と言われてる動物だからねえ。 マンションの部屋を片付け始めたころから、どうも様子がおかしいと思っていたらしく、大声で鳴きながら部屋の中をウロウロし始めた。 片付け最終日には部屋の中がガランドウになり、自分たちの臭いの染み付いたモノがなくなったので、不安感はピークに達したらしい。 こうなると「母ちゃん」もへったくれもない。 あたしは奴らにとっては、居心地のいいスペースを奪った「悪党」に過ぎないんだろうな。 特にぶんにとってはそうだ。 マンションでの生活が短いちびに比べ、ぶんはここでの暮らしが板についている。 ここで拾われ、ここで先輩猫たちとの暮らしの悲喜こもごもを経験し、やっと自分も後輩(ちび)を得て一人前になったかどうかの時期に、私の独断による移動騒ぎなのである。 そりゃ腹も立つし、不安にもなろう。    車で30分、古ぼけた1Kのアパートに、最後の荷物と同時に猫たちを運び込んだ日は、正直言って私もクタクタになった。 でも、身から出たさびである。 身辺の人々、近所の方々、大迷惑をおかけしてのリフォームだが、こうなったらやり遂げるしかない。 私なりに居直りを決めたのである。    猫たちはやはり、仮住まいの部屋に想像通りの反応を示した。 若いちびのほうが好奇心旺盛で、「うん? なんだかヘンだけど、とりあえずこの家にアタシの臭いをつけなきゃ」という攻撃的順応態勢である。 ぶんはもうアパートの入り口を入った時点でへこたれ、この家の押入れに入ったまま出てこない。 これでこの先ここで2ヶ月暮らしていけるのであろうか。 私は猫たちに申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、その実、この家での初風呂、初ビールを楽しんだりしている。 その私の薄情な姿に絶望したのか、ぶんも深夜に至ってレジスタンスの旗を降ろしたようである。 押入れから出てきて、ゴハンを食べ、水を飲んだ。 一晩中わめかれたら、2匹を連れて出て行かなければと覚悟を決めていた私であった。 

54. 9 ちびがいなくなった!?  
ある日、母ちゃんが猫用キャリーケースを取り出して、いやがるちびを無理やり押し込め、あたふたと出て行った。 それからしばらくして帰ってきたのは母ちゃんだけ。 ちび、どうしたの? 母ちゃん、もしかしてちびを捨てに行ったの? そりゃあ、オレ、時にはちびのことうっとおしいと思ったことあるけど、いくらなんでも捨てるなんてひどいんじゃない? オレの頭の中で、ちびの可愛かった姿ばかりが駆け巡った。 母ちゃんのバカ!鬼!人でなし! オレはおろおろ母ちゃんの周りを駆け回った。 母ちゃんは動揺するオレを膝に抱き上げて、今までにないくらい優しい声で言った。 「ぶん、心配か? 違うよ。 捨てに行ったりしないよ。 ちびはね、2.3日病院にいるだけだよ」 母ちゃんはオレが人間語を解すると思ってる。 事実、オレはある程度母ちゃんの言ってることがわかる。 なんだかよくわからないけど、母ちゃんがちびに酷いことをしたのではないということだけは分かって、少し安心した。 「あのね、ちびは女の子でなくなるだけ」と母ちゃんはまた言った。 「あっ、そうなのか」とオレは合点がいった。 ちびはここ数週間、時々、狂ったように鳴きわめくことがあった。 そういう時は、オレと遊ぼうともしない。 その声はとてもせつなくてオレは身を切られるような気がしたけど、どうしてやることも出来なかった。 オレは思い出した。 オレも母ちゃんに拾われて何日か経った頃、病院に連れて行かれたんだ。 訳も分からないまま、オレの体の一部分が切り取られて、オレは別の生き物になった。 ああ、ちびもそうなるんだ。    母ちゃんは、人間の中では、動物を愛してくれているほうだと思う。 でも、一緒に住んでいる動物が無制限に増えていくと、いろんな制約があって飼いきれないんだ。 だから、オレとちびを、それぞれ男の子・女の子でなく生きていくようにせざるを得ないんだ。  「ごめん、アタシに何億円か金があれば、どこかに広い土地を買って、何匹でも犬猫飼ってやれるんだけど」 母ちゃんは苦しそうに言った。 そりゃあ、そうだ。 母ちゃんは狭いマンション住まいだ。 ここの規約には「犬猫は飼ってもよいが1匹だけ」とある。 今は亡き先住猫が2匹元気でいた頃にオレを拾って、母ちゃんは都合3匹を「隠し飼い」していたのだし、今だってオレとちびとで2匹世話になってる。 相当ご近所に気を使っていると思う。 「だけどさあ」母ちゃんは憮然(ぶぜん)とする。 「人間の子供なんて、いろんなワルサして、騒音出して、そこらを汚くして、それでも親は周囲に誤りもしないのにさ。 なんで動物だけが責められるんだ?」 この不条理に耐えつつ、母ちゃんはオレたちの命だけは全うさせようと決意している。 

55. 「ある日の猫一家」その160   とめ流接待方法
とめ 「退屈~。ニャンか面白いことない?」 「クリオネになっちゃうぞぉ~」 「あ、お客さん、ようこそ、いらっしゃいましたぁ」 「麗しい髪の毛に歓迎のご挨拶っ」 (実際は必殺猫パンチ=大迷惑)    ↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑ ご覧になってからここをポチッと押して下さると嬉しいです。

56. 悪魔が夜来る
「悪魔が夜来る」というフランス映画が昔、あった。題名に似ずホラー物ではなくて、中世の城を舞台に吟遊詩人の恋など織り込み、叙情的なものだったという記憶がある。  何十年かを経て、今、私は、現実版の「悪魔が夜来る」を堪能させられている。ウチの問題児・バカ猫とめが、頻繁に私の布団にオシッコをする。ヤツ1匹を居間に置き、他の2匹と共に個室で寝ようと試みたところ、いじけて物凄い声で咆哮するので、やむなく3匹皆と別れ、私だけが個室で寝るようになった。ところが、ぶんもちびも、やはり私の布団で団子になって寝たい気持ちに変りはない。悲しそうに小さな声で鳴く。そこで、とめが団体利益代表、実力行使に出た。  ドアの把手に何度も飛びついて、開けることを学習してしまったのである。こんな猫、TVでは見たことがあるが、私は今までに飼ったことはない。 「うにゃ~ん」(ぶん・とめが母ちゃんを呼ぶ声) 「ガリガリ、どたっ。ガリガリ、どたっ」(とめがドア破りを試みる音) 「ぎい~~」(開通!) これが毎晩のように繰り返される。 「兄い、姐御、開きましたぜ。ささ、どうぞ」 と満面の笑みで先輩猫2匹を案内して、とめが入ってくる。 私は(私の布団は)、逃げ場がなくなってしまった。仕方なく、居間のソファの上で毛布にくるまって寝ている。 「ああ、映画の悪魔はすてきな美青年だったのになあ」 ドア破りの悪魔は、サビ柄のぶさいくな猫である。 *画面左上の猫ブログバナーを押して投票してくださると嬉しいです♪

57. 20 真夜中の大運動会
このバカ子猫が母ちゃんにもたらす被害は多大である。 真夜中の3時、コイツのおつむにぱちりとスイッチが入るや、オレたち2匹が「うん、なんだ、なんだ?」と起き出して、大運動会が始まるからだ。 話せば長くなるが、ウチの母ちゃんは「食べなくてもいい、眠りたい」のヒトである。 1日の疲れを食欲で紛らわすタイプではなく、ひたすらグースカ寝てリセットが完了するタイプの人間なのだ。 それも7時間半寝なければ、翌日がもたない。  オレは毎日18時間以上寝てる猫の身だから、このことに関しては母ちゃんを責めるわけにはいかないけど、人間で7時間半ってのは贅沢じゃないか?    まあ、それはともかく, 枕を蹴飛ばし母ちゃんに噛み付くくらいならいいんだろうけど、リフォームを終えたばかりのフローリングの床はまずかった。 あのヒトは見かけによらず義理堅い人間だから、深夜の猫の大騒動が階下の住人にご迷惑をかけていたらなんとしよう、と思い煩って不眠症に陥ったのである。 以前のじゅうたん敷き詰めの部屋なら、多少の騒音は吸収されていたはずであった。    オレだって本当はゆっくり寝ていたいんだよ。 でも、猫社会にもツキアイってものがあるからね。 そうそう、チビにばかり子猫の相手を押し付けてはいられないんだ。 というわけで、部屋中のものを蹴散らして、われらの疾走が始まるのだ。 テケテケテケ、とおトメが走る。 トットットッとチビが追う。 ドドドッとオレが加わる。 この音の違いは体重の差による。  テケテケ、トットッ、ドドド。  テケテケ、トットッ、ドドド。 これが際限もなく繰り返されるんだから、母ちゃんにとってはたまったものではなかろう。 ついに母ちゃんは寝不足で体の具合が悪くなってしまった。 ある朝起きると、母ちゃんは右の耳が聞こえなくなっていた。 それでも、大の医者嫌いで通してるヒトだから、エイヤっと仕事に出かけたものだ。  午前中の仕事で、すでに耳の異常が業務に支障をきたしているのを痛感した。 人の声が聴き取れない。 頭の右半分がプールなのである。 しゃべると、水中でドラをたたくような鈍い響きが「骨伝導」で伝わってくる。  「おお、神よ、わが使命を果たすことができません(そんなにたいそうな仕事か?)!」と心中叫んだそうな。 何勝手なことほざいてるんだとオレは言いたい。 あれだけ「辞めたい、辞めたい」と願っていた仕事じゃないか。 ちょうどいい機会だから、コレを理由に辞めちまえばいいじゃないか。   そこが人間、オロカなもので、いざとなると覚悟が定まっていないのだろう。 母ちゃんは傍目にも見苦しいほどうろたえた。 昼食時、食べ物を咀嚼すると、ゴリゴリと異様な音が頭蓋骨の中に響きわたる。 見かねた同僚が何人も、「お医者に行ったほうがいいですよ」と親切にもそれぞれお勧めの耳鼻咽喉科を教えてくれた。 日頃、職場の人たちにも仏頂面をしている母ちゃんである。 こういう心遣いにもっと感謝していいのではないか。 世の中、自分ひとりで生きているという傲慢さほど、端迷惑なものはないと思うよ。

58. 「ある日の猫一家」その153   趣味の違い
姉ちゃんはTVの「動物もの」が大好き 「あ、大草原だ!何が出てくるんだろ」 「鳥の卵だっ。これ、獲りたいなあ」 あたいは、TV、どうでもいい。 「どーせ絵に描いた餅だもん」 それよりも、母ちゃんが遊んでくれる猫ジャラシのほうがいい。 実戦向きだし。    ↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑ ご覧になってからここをポチッと押して下さると嬉しいです。

59. 89 お帰りなさいっ
ガチャガチャ・・・ ぶん   さあさあ、玄関開ける音がしてるぞ。二人とも急げっ。 ちび   なんだよ、兄貴。せっかくいい気持ちで寝てたのにぃ。 ぶん   母ちゃんのお帰りだィ。 とめ   ふあ~っ。いいじゃん、このまま寝てようよ。 ぶん   オマエら、態度悪いぞ。誰のおかげでメシが食えると思ってる? ちび   はいはい、母ちゃんのおかげでござんす。 とめ   ちぇ、しっかたねーなあ。どっこいしょっと。   母ちゃんが居間のドアを開けるまではこのような体たらくであることと推察いたしますが、まあ、健気なもので、その後は3匹気を揃えての演技でございます。 3匹  おかえりなさ~い、母ちゃん! 母ちゃん   おお、今日も3匹元気でいたか。毎日留守番ご苦労さん。 ぶん   本日も異常なしでありますっ。以上報告終わりっ。  ←長男の任務   これが花瓶か何か壊していたりすると、ぶんは出てきません。 ガサガサ、バリバリ。  (スーパーの袋の中を探る音) ちび   母ちゃん、何かウマイもの買ってきてくれた? とめ   母ちゃん、明日は休み? 遊んでくれるの? 母ちゃん   うっ。何もウマイもの買ってないし、明日も休めないよぉ。 ちび ・ とめ   なあ~んだぁ。つまんないの。   私が子供の頃、働いていた母親の帰宅を待ちわびてこのような仕草をしていたことを思い出します。猫も人間も、やることは同じですなあ。 ↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑ ご覧になってからここをポチッと押して下さると嬉しいです。

60. 26 土の臭いが恋しい 
ウチの母ちゃんはここ4・5日短いながら「夏休み」を取っている。 その日常は、猫のオレがあきれ返るくらいのグータラぶりだ。 折からの酷暑で、旅行も外出もする気にならず、家に引きこもって読書三昧の日々である。  「ぶん、ヤル気出ないよ~」 なにしろ、早朝5時に目覚めると、すでに全身汗まみれ、ちょっとでも動くと滝のように汗が流れ落ちる。 2・3年前まで、客のある時以外はエアコンをつけなかった母ちゃんが、去年あたりからこらえ性がなくなり、スイッチを押すことが多くなった。   「ぶん、歳を取ると、寒さより暑さの方がこたえるんだよ」 そう言えば、夏場は人間の高齢者の急逝が多い。 いや、中年も、若者でさえも、「熱中症」とやらで頓死している。 屋内での熱中症だってあるんだそうな。   でもね、地球の苦しみはそれどころじゃないってオレは思うんだ。 コンクリートやアスファルトで覆われて、呼吸も出来ず、水分も吸収出来なくて、苦しんでいる大地の声がオレの耳には聞こえるよ。   母ちゃんが子供の頃は、まだ土というものがふんだんに身の回りにあった。 猫や犬の糞がそこらじゅう転がっていても誰も気にしなかった。 子供たちは泥ダンゴをこね、土埃で真っ黒になって一日中遊んでいた。 台風が来ると、大水の中をゴムの長靴で歩いて登校した。 休校になんか絶対ならなかった。 出水はすぐに大地が吸い込んでくれるから誰も心配しなかった。 アトピーや花粉症で苦しむ者もいなかった。 だけど、人間が大地にフタをし始めた頃から、地球の様子がおかしくなった。 人間も有史以来の奇病に取り憑かれるようになった。   オレだって土を踏んでいない室内飼いの猫だから、エラソーなことは言えないけど、大地の発する危険信号を感じる能力だけは、人間より高いんだ。 ちびやトメはどうかなあ。 本当は3匹で土の上を転げまわって遊びたいんだけど。 そしてオレが感じてることを2匹に伝えたいんだけど。  今、都市部の人間の子供は、「土」と言えば、ガーデニングセンターで袋に入れて売っている茶色の粉末、というほどの認識しかないのかも知れない。